作品デザインの営利利用や著作権について思うこと

長いことスクールをしていますと、「これを作って展示会に出してもいいですか」

「売ってもいいですか」と聞かれることがしばしばありました。

生徒さんに喜んでもらいたい一心で、これまで販売して好評だったデザインの作品でも惜しげなくお教えしているので、自分の利害を侵害されるような不安な気持ちもあるけれど、そうして活用してくれようとしていることへの嬉しい気持ちも大きくて、その相反する気持ちの板挟みで、答えに困っていました。

これではいけないと、お互いにWinWinになるためにはどうしたらいいのかと、とことん自分と向き合って答えを導きました。

出した答えは、「会員さんであれば、類似作品を作って好きに売ったり展示したりしていいよ」ということです。入会金と年会費という対価をいただければ、著作権の利用の一部を許可しますよ、ということです。販売や展示に際して、当方に報告する必要もありません。

「先生の作品は本当に独特なので、著作権を守るべき!」と過去に人から言っていただいたこともあり、著作権に関して深く考えたり調べたこともあります。その結果、主要な作品群はすべて写真集としてまとめ上げて自社出版し、国会図書館に納めてもいるので、(そんなことあり得るとは思えませんが)真似した人から逆に著作権侵害を訴えられるような心配は、おそらく皆無です。

ただ、そもそも、「著作権」って難しいなあ、と思いませんか?

いくら私が誰からも教わらずにオリジナルで作品を生み出したといっても、シリカジュールはアメリカンフラワーに似ているとか言われますし、偶然に世界のどこかで同時発生的にそっくりな作品を誰かが生み出すという可能性だってありますし、

無意識の記憶に刻まれた誰かの作品のデザインがたまたま意識に浮上してきて、それとは知らずに使っているかもしれないのです。

だいたい、私の近年の作品は、自然の姿かたちをそのまま写真に写し取ってシルエットをなぞり、立体感や質感も真似していますから、そんな、対象物をそのまま真似した作品に著作権を主張できるのでしょうか?「真似していいですか?」と、自然にお伺いするべきかもしれません。でも、自然は著作権や肖像権を主張しませんので、自然とはなんと寛大でありがたいものでしょう!

話を戻しますが、作り方を本などで販売している作家さんは、類似作品の販売について、一般的には断られるようですね。

作り方の本に「類似作品の販売を禁止します」という但し書きがあったりするのをよく見ますし、中には手作りイベントに乗り込んで、本で作り方を紹介している作品の類似作品を販売している人を「摘発」していたという話も耳にしたことがあります。

私も、オリジナル作品を生み出しては販売したりしている人間なので、そうされたいお気持ちもわからないでもありません。

たとえば映画や音楽のデータを、そのままなんの苦も無くコピーして再配布するのは、確かに犯罪だと思います。

ただ、作り方本を見て真似して作ったという場合は、それを作る時間や労力、材料費などを支払ったのはその方であり、展示販売していたものは、あくまでもその方が作った作品のはず、とも思うのです。

オリジナルを生むのは確かに真似するよりずっと大変ではありますけれども、どんなに見た目を真似されても、Aさんのオリジナル作品に宿っているAさん独特の「気」のようなものまでは真似できませんし、それを真似したBさんの作品にはまた、Bさん固有の「気」が入っていて、それを気に入って購入される方は、AさんのオリジナルではなくBさんが作った作品に出合う運命にあり、それを好きで購入する訳ですから、それはそれで素晴らしい事だと思うのです。

もし私の会員さんが私の作品を真似して作った作品を売ったとして、それが誰かの心を喜ばせて、その見返りとして会員さんに、生活の糧となる対価が入るとしたら、なんと嬉しく光栄なことでしょう!と、思うのです。

AWJの理念はこういうものです。

「アートワイヤージュエリーを手工芸の一分野として確立し、会員様の作品が美術品として認められるようサポートする」

すなわち、会員様の作る作品は、ショウヨリコの亜流などではなく、アートワイヤージュエリーという手工芸の一分野における、唯一無二の美術品として、社会的に高い価値を認められる。

となる未来を志向しています。

なので、お教えするテキストと動画に妥協はしません。

間違っているとか、もっとよりよい方法が見つかったとか思ったら、それがどんなに長い間やってきたメソッドであったとしても、正直に会員さんに伝えて直すことを厭いません。

AWJのメソッドは簡単ではないかもしれないし、それを活用できるのは、ごく限られた人かもしれません。でも、その、ごく限られた誰か1人のために、私は人生をささげてメソッドを磨き、残していきたいと思っています。